アヴェ・マリア
~愛と喜びのメロディー~
[ 2008.11.19.発売 ]
Beltaレコード / YZBL-1010 ¥2,500(税込)
チェロ & ピアノ:1,3,6,8,11,12
ピアノ:2,4,5,7,9,10
◆収録曲 & 試聴◆
「アヴェ マリア」によせて
◆萩谷由喜子(音楽評論)
ピアノの宇宿真紀子とチェロの宇宿直彰による姉弟デュオ「Les Cloches(レ・クロッシュ)」がクリスマスにちなんだ小品集を録音した。
ユニット名はフランス語の「鐘」の複数形。フランスで育った姉弟が教会の鐘の音に親しんで成長したことと、両楽器の音の響き合い、溶け合いを鐘の音になぞらえたことがユニット名の由来だが、ここに収められた小品類を聴いていると、あたかもパリの石畳に立って教会の鐘々の音に耳を傾けているような心地に誘われてくる。
ヨーロッパの寺院の鐘というのは、日本のお寺の釣り鐘とは異なり、大小いくつかの鐘が同時に響き合って音のアンサンブルを織り成すものだ。
暁の光射する早朝の鐘の音は曙色にもオレンジ色にも染まるし、夕映えに響くそれは、真紅からスミレ色へ、そして薄墨色へと変化して聴こえるだろう。
宇宿姉弟の演奏は、まさにその鐘々の色彩的な響きを彷彿とさせるニュアンスゆたかなもので、曲想と場面に応じた七色の音色で作品を染め上げているのが最大の魅力だ。
アルバム・タイトルとなった『アヴェ・マリア』の敬虔な調べから、鐘の音の模倣であるリストの『ラ・カンパネラ』、神の恩寵を讃えた『アメージング・グレース』まで、ひとつとして同じ色彩で奏でられた曲はなく、1曲1曲、ふたりは心と技をもってその曲の世界を描き分けている。
クリスマスばかりではなく、末永く座右に置いて繰り返し聴きたい珠玉の小品集の誕生である。